05 年(平成17年)6月1日、外来生物法が施行されました。
この法律は、特定外来生物※による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、
生物の多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与することを
通じて、国民生活の安定向上に資することを目的にしています。
特定外来生物:哺乳類・鳥類・爬虫類などの他、昆虫や植物なども指定
日本では、沖縄や奄美大島のマングース(右写真)が有名ですよね。
沖縄や奄美大島ではサトウキビの栽培が盛んで、ノネズミによる
被害や、猛毒を持つハブによる人的被害の軽減策として、マン
グースが移入されました。
しかし、マングースはハブを食べることはほとんどなく、むしろ
固有種(左からヤンバルクイナ、イシカワガエル、アマミノクロウサギ)
の天敵になってしまったのです。
事の始まりは動物園からの脱走(意図的に逃がした?)と、70年代の
アニメブームによる個体の輸入が大きな要因のようですが、アライ
グマが人間に慣れることはありません。
ところで野生のアライグマは、アライグマ回虫という寄生虫を持っていることで有名です。
この回虫の仔虫がアライグマ以外の動物、たとえば人間などに寄生すると、仔虫は親に
なれず、体内を移動します(幼虫移行症)
幼虫移行症とは、本来の宿主ではない宿主に寄生したため居心地が悪く、居心地の良い
場所を求めて幼虫が体内を移行し、様々な障害を起こすことを言います。
結果、好酸球性髄膜脳炎などの致死的な神経障害を起こすこともあります。
私も動物公園勤務時代、飼育動物たちの寄生虫検査を続けてきましたが、
幸い、アライグマから回虫の虫卵を検出したことは、一度もありま
せんでした。
余談ですが、回虫卵が良く検出される動物としてはライオンの他、
シマウマ、ホッキョクグマ、シマスカンクなどがいました。
他にも、モモイロインコ(写真左)やホシガメ(写真右)などから
検出したことがあります。
アメリカでは以前、網膜芽細胞腫の疑いで摘出された眼球から、アライグマ回虫の仔虫
が検出されました。
このことから当初、網膜芽細胞腫の原因としてアライグマ回虫の幼虫移行症が疑われま
したが、現在では、遺伝子の異常により発症することが証明されています。