昭和28年に公布された「らい予防法」が平成8年に廃止されてから、今年の4月1日で30年に
なりました。
「らい」とは、病気の外見や感染の恐怖心から生じた差別的な呼称で、回復者にとっては傷
つき、悲惨なイメージを与えることから、らい菌(下写真)の発見者であるハンセン医師に
ちなんで、「ハンセン病」に改められました。
らい菌は飛沫感染によって人から人へ感染すると考えられていますが、多くは免疫力が低い
乳幼児期に、家族内の感染者との濃厚接触を繰り返すことで感染するので、通常の免疫力を
持っていれば、学童期以降に感染することは少ないとされています。
現在では治療法も確立し、早期治療を開始すれば完治する病気です。
リファンピシン・クロファジミン・サルファ剤など、複数の抗菌薬(下写真)による薬物
療法のほか、ステロイド剤の服用が必要なケースも多く見られます。
治療は最短でも半年、長い場合は数年にも及びます。
ハンセン病は古代中国の文書、インドの古典、キリスト教の聖書など数多くの古い文書に
登場し、日本でも「日本書紀」や「今昔物語集」に記録が残っていると言われています。
らい菌は、どのようにして生き残ってきたのでしょうか。
ハンセン病は動物には感染しない「人間特有」の病気と考えられていましたが、2000年以降、
イギリスやアイルランドに生息するアカリス(下写真)、南米のアルマジロ、西アフリカの野生
チンパンジーでハンセン病が発生していることが確認されるようになりました。
現在、イギリスやアイルランドではアカリスとの関係は低くなっていますが、中世ではアカ
リスをペットにしたり、毛皮の取引が盛んに行われていました。
アカリスから人にハンセン病が広がったのか、人からアカリスにハンセン病が広がったのか
は不明とのこと。
野生チンパンジー(下写真)から分離されたらい菌のDNAを分析した結果、意外な事実が
判明しました。
人の間ではほとんど見られない、珍しい遺伝子型を持っていたのです。
このことから、少なくとも人からチンパンジーに感染が広がったものではなさそうです。
チンパンジーのハンセン病について、研究者は2つの可能性を示唆しました。
動物由来と環境由来です。
チンパンジーは頻繁に狩りを行い、アカコロブス(下写真)やレイヨウの子どもなどを食べる
ことが知られていますから、それらから感染した可能性もあります。
新たな「らい菌」の発見も続いており、中には人の細胞では増殖できず、マウスなどの動物を
介さなければ維持できないもの、アメーバや昆虫の体内で増殖できる「らい菌」も確認された
ようです。
さらに、水中や土壌で生き残ることができる「らい菌」もいることなどから、環境そのもの
に長期にわたって「らい菌」が潜んでいる可能性も指摘されています。
なおブラジルは、インドと並んでハンセン病患者数の多いことで知られていますが、大きな
要因の一つが、ココノオビアルマジロ(下写真)の肉や内臓を食べる習慣があることです。
特にアルマジロの肝臓は、多くの「らい菌」に汚染されているからです。
ただし、南米に「らい菌」を持ち込んだのは、ヨーロッパ人と考えられています。






