留学や就労目的で日本に3カ月を超えて滞在する予定の外国人に、入国前の結核検査と発症
していないことの証明書の提出を義務付ける「入国前結核スクリーニング」が、フィリピン
とネパールを対象に6月23日から、始まりました。
日本政府は今後、対象国を中国・インドネシア・ミャンマーにも広げる予定です。
その背景には、在留中に結核と診断される人の割合が増加傾向にあり、対策が急務となって
いたからです。
2023年、日本国内で結核と診断されたのは約1万人で、外国生まれの人の割合は16%でした。
検査は日本側が指定した現地の医療機関で行われ、証明書の有効期限は検査日から原則180日
間で、費用は自己負担となっています。
新たな入国前結核スクリーニングですが、海外(アメリカ、イギリス、オーストラリアなど)
ではすでに、実施されています。
さて、1944年(昭和19年)にアメリカの微生物学者ワクスマン(下写真)が、放線菌から結核
の特効薬であるストレプトマイシンを発見するまで、人類は結核に悩まされてきました。
日本では、弥生時代の遺跡である鳥取県の青谷上寺地遺跡(下写真)から、脊椎カリエス※
と思われる人骨が複数発見されています。
※脊椎カリエス:結核菌が脊椎に感染した病気(明治期を代表する文学者、正岡子規が有名)
その後、古墳時代の遺跡(千葉・東京・宮崎など)からも脊椎カリエスの人骨が見つかって
いますが、縄文時代の遺跡(人骨)からの発見はないとか。
弥生時代には東アジア系や北東アジア系の人たちが朝鮮半島などから日本列島に渡り、縄文人
と混血したと考えられており、朝鮮半島や大陸(中国)との交流も盛んに行われていたので、
大陸から結核菌が持ち込まれた可能性もあります。
結核は江戸時代には労咳(ろうがい)と呼ばれ、暴飲暴食による消化不良や精神の疲労が原因
と考えられていたため、浣腸や瀉血(しゃけつ)を繰り返して身体から毒を抜くという、現代
では医学的エビデンスがないとされている治療も行われていました。
瀉血とは、老廃物を取り出すために血液を抜く治療法ですが、血液中に含まれる鉄分は細菌
にとっても重要な成分であることが分かった現在、鉄分を減らす瀉血は結果として、抗生剤
のない時代の治療法として、一定の意味があったと考える研究者もいるようです。
また、コイの生き血を飲んだりイモリの黒焼き(下写真)を食べるなどの民間療法も行われ
ていました。
生き血の効果は不明ですが、コイの肉の薬効は魚では最も多く、利尿作用や血液循環・肝機能
の改善などのほか、消化を助けたり頭痛・冷え性にも良いとされていますし、イモリの黒焼き
(実際は蒸し焼き)も精力増強や滋養強壮に効果があるらしいので、当時の対症療法としては
理にかなっていたのかも知れません。
なお結核菌は、1882年(明治15年)にロベルト.コッホが発見しています。
現在の治療ですが、リファンピシン(下写真)など複数の薬剤を組み合わせた化学療法が確立
しています。
単剤投与の場合には、耐性菌が生まれる可能性があるからです。





