日本競馬会の歴史的ヒーローであったディープインパクトが、今年7月30日に亡くなりまし
た。それも病死ではなく、安楽死という方法で。
シンボリルドルフ以来、史上2頭目となる無敗でクラシック3冠(皐月賞・日本ダービー・
菊花賞)を獲得し、平成最強の馬と称されましたが、早すぎる最期でした。
全レースに騎乗した武豊騎手は空を飛ぶ感じと表現しましたが、ディープインパクト自身も
天空に駆け上りました。
ディープインパクトは今年7月28日に首の手術を受け、経過は良好だったようですが、翌29日
の午前中に突然起立不能となり、30日早朝のレントゲン検査で頸椎に骨折が見つかりました。
その後、回復の見込みが立たない(予後不良:よごふりょう)と診断され、安楽死の処置が
なされたそうです。
そもそも安楽死とは、広辞苑によれば「助かる見込みのない病人を本人の希望によって苦痛
の少ない方法で人為的に死なせること」となっています。
もちろん人間の場合の話で、スイスなどヨーロッパの数か国やアメリカの一部の州などでは
認められているものの、日本では法律上、認められていません。
人間のように、その「想い」を伝えられない動物の場合、多くは所有者が判断することになり
ますが、所有権のない者が、軽々に論ずることはできません。
一番つらい判断をするのは、いつもそばで見ていた人たちなのですから、その判断は正しい
と思います。
逆に多くのファンの要望から、あえて安楽死の処置を取らず、30名を超える獣医師団による
異例の大手術が行われたテンポイントの例もあります。
「流星の貴公子」と称されたテンポイントは、43日間にも及ぶ脚の痛みに耐えながら、最終的
には自然死という形でこの世を去りました。
その後、動物が対象となった2例目の葬式も行われています(1例目は忠犬ハチ公)
なおテンポイントについては、次の機会にご紹介させていただきますが、死亡した翌日の
スポーツ紙のトップ記事や葬儀場に掲げられた横断幕を見れば、どれほど愛されていたかが
分かります。
一方、牛や豚などの家畜が予後不良と診断されれば、「と畜場(食肉処理場)」に搬入され
食肉として処理されますが、今回のような安楽死した動物の肉が食用として処理・流通する
ことはありません。
では、身近な犬や猫はどうしているのでしょうか。
日本では、人の安楽死は法律で禁止されていますが、動物の安楽死は法律で禁止されていま
せんので、人間と同様、様々な病気や腫瘍(転移・再発)を発症した場合、安楽死の対象に
なることがあります。
特に犬の腫瘍発生率は猫の2倍あるので、注意が必要です。
犬猫に多く発生する腫瘍としては乳腺腫瘍(下左写真)や皮膚の腫瘍(下右写真)のほか
リンパ腫などがあります。
腫瘍のリスクを減らす意味でも、繁殖目的がなければ去勢や避妊手術の実施、肥満防止、
受動喫煙の防止などに心がけることをお勧めします。
また猫では、猫白血病予防ワクチンを接種することで、リンパ腫の発症リスクを下げる
ことができると言われていますので、たとえ室内飼いであっても、ワクチン接種をお勧め
します。