近い将来、牛を使って地震予知が出来るようになるかも知れません。
今年元旦に起きた能登半島地震や先日の台湾の地震など、プレート境界にある
地域では地震が頻発していますから、地震予知の精度が上がれば、きっと多くの
生命・財産を守ることができるはずです。
世界各地で、地震前に起きた動物たちの「異常行動」が観察されてきました。
たとえば「ナマズ」が暴れる(江戸時代に記録あり)、「ネズミ」が町からいなく
なる(関東大震災のエピソードとして有名)、トルコでは「カラス」が大群で空を
飛ぶ(下写真)、「イヌ」が吠え続ける(遠吠えをする)又は外に出たがるなどなど。
これらが本当に地震と関係した行動だったのか、ただの偶然だったのか、詳細は
分かっていません。
ただ動物たちは、五感をフルに使って外敵や自然災害から逃れ身を守り、今日まで
命をつないできたのも事実です。
ですからリスク管理という点では、私たち人間よりも遥かに優れた能力を持っていた
としても、何ら不思議ではありません。
麻布大学獣医学研究科の山内研究員の調査では、大地震前には乳牛の「搾乳量」が
落ちることが分かりました。
東日本大震災でも、地震発生の1週間前に乳牛の搾乳量が減少したことが分かって
います。
乳牛は毎日の乳量を継続的に観察できるので、安定的にデータ収集ができます。
2014年、山内研究員は茨城県つくば市の国立研究法人「農研機構」協力のもと、
つくば市の48頭の乳牛を対象に1年間の乳量変化のデータを調べました。
その結果、平均乳量が一定水準以下に下がる日が2日続けて起きた4/16~4/17の後、
5/5に伊豆大島近海を震源とするM6.0の地震が発生しました。
また、6/23~27にかけては最大約5リットルの減少が見られ、その後7/12に福島県沖を
震源とするM7.0の地震が発生、11/4~5にかけては突然1.5リットル減少し、その後11/22
に長野県北部を震源とするM6.7の直下型地震が発生しました。
牛たちに近い地域の地震ほど、大きな影響を受けているようです。
日本で飼われている乳牛は、そのほとんどがオランダ原産のホルスタインという
品種(下写真)で、寒さには強いものの、夏の暑さは苦手です。
暑い時期は、酷暑による疲れと暑さのストレスから食欲が落ち、搾乳量も少なくなる
ことが知られています。
それ以外の時期に突然、搾乳量が落ちるというのは、明らかに何かしらのストレス
があったと思われます。
地震前には地殻に応力が加わり、電磁気の変化や地下水の化学的性質の変化など、
物理・化学的な現象が起こるため、乳牛たちはそれらをストレスとして「感知した」
とは考えられないでしょうか。
山内研究員は、2日続けて平均乳量が低下してからの2~3週間を警戒期間と仮定して
データを精査したところ、つくば市から半径1,000Km規模の地域でM5.5以上M7.0
以下の地震が7回発生しており、6回は警戒期間だったそうです。
今後の研究結果が楽しみです。