今年の話題から Ⅱ ペストの発生

今年の8月初め、中国北部の内モンゴル自治区でペスト患者1名が発生し、その後、

同居する家族2人にも感染が確認されました。

 

 

 

 

 

お隣のモンゴルでもペストが疑われる患者3人がいることが分かり、3人とも野生

マーモッの肉を食べていたとのこと。

 

 

 

 

 

モンゴル政府はマーモットの捕獲を禁止していますが、現地では違法に捕まえて

食べている(下写真)ようです。

 

 

 

 

 

ペストは齧歯類体液や血液との接触のほか、齧歯類に寄生するノミケオプス

ネズミノミ:下写真)に刺されることで感染します。

 

 

 

 

 

このノミはクマネズミドブネズミなど、数十種類の哺乳類からも見つかっており、

ヒトを好んで吸血するとも言われていますので、注意が必要です。

またペスト菌は、古代エジプトのミイラ肝臓からも見つかっていますので、

かなり昔からある感染症の一つです。

 

 

 

 

 

ペストはペスト菌感染による全身性の感染症で、血液が固まった壊死の症状から

皮膚が黒くなり、別名「黒死病」とも呼ばれていました。

そのため、中世ヨーロッパでは非常に恐れられていた病気で14世紀に大流行し、

ヨーロッパの人口の1/3が亡くなったと言われています。

全世界から一時は消えたペストですが、現在でもアジアや北米、アフリカなどでは

散発的に発生しています。

 

現在の治療は、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系などの抗生物質10~14日

投与することになりますが、ペストは進行が速く治療時期を逃すと多臓器不全から

死に至る確率も高くなります。

日本ではストレプトマイシンが保険適用になっており、最も効果が高いとされて

いますが、副作用もあるので過度の投与は避けるべきとのこと。

またワクチン自体はあるものの、こちらも副作用が強いため、WHOは流行地の医療

従事者など、感染リスクの高い人に限定した使用を推奨しています。

 

なお、ペスト菌を発見したのは北里柴三郎(下写真)で、栄えある第1回ノーベル

生理学・医学賞の最終候補にもなっています。

 

 

 

 

 

北里柴三郎は、ペスト菌以外でも破傷風菌の純粋培養や血清療法の確立など、多くの

功績を残しました。

ただ、当時は共同研究という概念もなかったため、ノーベル賞を受賞することは

できませんでした。

 

今のところ、ジビエ食からのペストの感染は限られていますが、サウジアラビア

ではペスト菌に感染していたラクダの肝臓生食したことによる感染が、報告

されています。

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