9月は「がん征圧月間」です。
現在、高齢化が進む日本では2人に1人が「がん」になり、3人 に1人が「がん」で
亡くなっていますので、日本人の死因の3 分の1は、がんということになります。
多くの先進国では、がんで亡くなる人は減少していますが、なぜか日本だけは増え
続けており、食事の欧米化による脂肪の摂りすぎ、喫煙や飲酒、運動不足などの
生活習慣が、大きな要因になっているようです。
ところで皆さんは、ハダカデバネズミという動物をご存知でしょうか。
アフリカのケニアやソマリア、エチオピアなどに生息し、サバンナの地下トンネル
で暮らす、体長10cmほどのげっ歯類です。
生活するトンネル内は常時30℃に保たれ、名前の通り体毛が退化しました。
ハダカデバネズミは社会性を持つ動物で、上下の唇の皮を突き破って歯が飛び出して
います(出歯)
群れには子供を産む女王ネズミ、女王と交尾する王様ネズミ、エサの採取や子育て、
その他雑務を行う働きネズミなどがいます。
また女王ネズミが死ぬと、巣内のホルモンバランスが乱れて新たな女王ネズミが
誕生し、子孫を残していきます。
ハダカデバネズミは寿命の短いげっ歯類の中では寿命が長く、がんを含む老化関連
疾患も起きにくい動物として、有名です。
なぜなら、①がん耐性 ②老化耐性 ③低酸素耐性 などの驚くべき能力を持っている
からです。
普通は、複数のがんを抑える遺伝子(がん抑制遺伝子)が働かなくなることでがん
が発生しますが、ハダカデバネズミでは一部のがん抑制遺伝子が抑制されないこと、
さらには腫瘍形成遺伝子も持っていないことから、がんになりにくい動物と言われ
ています。
日本でも上野動物園など、一部の動物園で見ることができますが、私自身はまだ、
実際に見たことはありません。
一方で大きな動物も、がんにならない(なりにくい)と言われており、たとえばゾウ
は、ほとんどがんになりません。
P53というがん抑制遺伝子は、人では1組しかありませんが、ゾウでは何と20組もある
そうですから驚きです。
クジラも、がん抑制遺伝子が活性化しているため、ほとんどがんになりません。
大きな動物は、性成熟も遅く子育て期間も長いので、生涯に産める子供の数が少ない
という特徴を持っています。
種の保存の意味でも、がんになりにくく長生きできるのは、理にかなった特性と言う
しかありません。
他にも、4億年以上生き延びているサメは細菌やウイルス、化学物質などに対する強力
な免疫機能を持っているので、がんになりにくいと言われています。