梅雨が明けて本格的な夏が来ると、細菌が増殖しやすくなるため、サルモネラや黄色
ブドウ球菌(下写真)、カンピロバクターなどによる食中毒に注意が必要になります。
一方で、近年増加しているのが「アニサキス」という寄生虫(下写真:幼虫)による
食中毒で、最近になってマスメディアでも多く取り上げられるようになりました。
アニサキスの成虫は海洋哺乳類(イルカやクジラなど)の胃に寄生し、卵は排泄物と
一緒に海中に出てきます。
卵は海中でふ化して幼虫となり、その幼虫をオキアミなどが食べ、そのオキアミをサバ
やアジ、カツオ、イカなどが食べ、最終的に海洋哺乳類の体内で成虫になります。
人では、生きた幼虫を含む生鮮魚介類を食べることで感染し、幼虫が胃壁や腸壁に
侵入して食中毒(アニサキス症)を引き起こします。
多くが急性アニサキス症で、食後数時間~十数時間後に激しい腹痛や嘔吐、下痢など
を発症した場合は、医療機関を受診するようにして下さい。
胃内に幼虫がいる場合は、内視鏡の先に装着した鉗子で幼虫を挟んで摘出します。
今ほど輸送技術が発達していなかった頃は、冷凍して輸送するのが一般的でしたが、
現在では冷凍せずに新鮮なまま輸送できるようになったことが、アニサキス症の増加
の要因です。
また幼虫は、-20℃で 24時間冷凍又は 60℃で 1分加熱すれば死亡しますので、冷凍
後のもの又は加熱処理したものを食べた方が良さそうです。
予防としては内臓を生で食べないこと、目視による確認が重要になります。
最近のニュースによると、熊本大学の研究チームが瞬間的に巨大な電力(15,000ボルト)
を発生させ、アニサキスの幼虫を電力で殺虫する装置を開発したとのことですから、
安心して新鮮な魚介類を食べられる日も近いと思います。