先月、岩手県の盛岡市動物公園で、カイウサギ全15匹を安楽死させたというニュ-スが流れ
ました。
園では、数匹に慢性鼻炎を引き起こすパスツレラ症が発生したことから、感染防止のため、
重症化していない個体を含む全頭を殺処分(安楽死)したそうですが、ニュースを聞いた
市民からは、賛否両論があったとか。
パスツレラ菌は多くのウサギが鼻腔などに保菌しており、高温多湿や寒冷など、ストレス
や免疫力の低下などで発症し、飛沫感染や接触感染のほか、交尾感染・母子感染を起こし
ます。
感染したウサギは、軽症では涙や結膜炎などを、重症では肺炎や呼吸困難を引き起こして
死亡します。
治療は、ペニシリン系・テトラサイクリン系などの抗生物質が有効ですが、パスツレラ菌
は常在菌であるため、菌を完全になくすことはできず、再発します。
またパスツレラ症は人畜共通感染症で、ペットからうつる感染症としては最も患者が多く、
イヌの70%、ネコのほぼ100%がパスツレラ菌を保菌していると言われています。
人も咬みつかれたり傷口を舐められることで感染し、気管支炎や肺炎を起こしたり、皮膚
が大きく腫れる(下写真)こともあります。
中でも高齢者や、糖尿病・免疫不全などの基礎疾患のある方については、過去に死亡例も
ありますので、要注意です。
特に糖尿病患者で、血糖のコントロールができていない(血糖値が高い)時は、白血球が
菌を捕まえるスピード・その働き・殺菌力が低下することが知られています。
なお、パスツレラ症は牛や豚、鶏などにもがあり、パスツレラという名前は、細菌の研究
に貢献したパスツールを称えて、命名されたものです。