昨年の12月2日、愛媛県立とべ動物園のシロクマ「ピース」が、二十歳を迎えました。
ピースは人工保育で育てられた日本初のシロクマで、当時は世界でも成功例は2例しかない
とても難しいものでした。
当初は海獣用ミルクを与えていたようですが、下痢が見られたため中止し、その後はイヌ用
ミルクに切り替え、濃度を低濃度から少しずつ高めながら、最終的には150日齢ほどで離乳
しています。
エサはイヌ用缶詰から始まり、ビタミン剤や鉄剤の投与、さらに鶏肉を骨ごとミンチした
ものなど、毎日が手探りの飼育だったに違いありません。
ピースは、暑い環境を嫌がり低い温度を好んだため、飼育員の高市さんは自宅の窓を開放
するなどして、低い環境を保ちました。
人工保育が成功した一番の要因は、とべ動物園がOne Teamになったことです。
高市さんは、シロクマの他にも担当する動物たちがいましたが、それらはすべて、他の
飼育員が分担して受け持ち、高市さんをピースの専任飼育員としたことです。
シロクマは、生まれてしばらくは目も耳も閉じていて、嗅覚のみが頼りになります。
野生でも、母親と兄弟の臭いだけで育つので、ピースも安心できたと思います。
そのような判断のできるリーダー、それを受け入れるスタッフなど、素晴らしい!
どこの動物園でも、できることではありません。
ところでピースは、3歳頃から「てんかん」症状が見られるようになりました。
「てんかん」とは、脳内の神経回路がショートしているため、突然発作を起こす病気です。
イヌでも「てんかん」は見られ、特に増えているのがダックスフントです。
「てんかん」には先天性と後天性があり、イヌで5歳までに発症した場合は、先天性の
てんかんと考えられています。
ピースが3歳頃に発症したことを考えると、先天性かも知れません。
てんかんは人間にもあります。
動物と人間では薬の代謝が異なるので、人間によく効くてんかんの薬が、動物にも効くとは
限りません。
また、てんかんの薬は一生涯、飲み続けることになります。