10月20日、出水平野にナベヅルの第一陣9羽が、飛来しました。
飛来数の一番多いナベヅルは、世界中に10,000羽ほど生息しており、
一部は朝鮮半島でも越冬しますが、大部分は出水に飛来します。
そのため、高病原性鳥インフルエンザなどの感染症が出水で発生した
場合、種が絶滅する恐れもあります。
今年出水では、ツルの「ねぐらの水」と死亡したナベヅルから、高病原性鳥インフルエンザ
ウイルスが検出されました。
ただ、ナベヅルの直接的な死因と鳥インフルエンザウイルスとの因果関係は不明です。
今年は、ウイルスを運ぶカモ類も多数飛来しているので、来年2~3月の北帰行までは、気が
抜けません。
種の保存の意味でも、出水のような一極集中は避けるべきですが、越冬地の分散は思うようには
進んでいません。
出水以外では、山口県の八代盆地が本州唯一のナベヅル越冬地で、戦前は300羽以上が飛来して
いた時期もありましたが、次第に数が少なくなり、現在では10数羽ほどになっています。
さて、皆さんはナベヅルの「ナベ」の意味を知っていますか?
「鍋で食べていたから」という人がいましたが、ツルだけを鍋で食べるわけではありません。
昔は「かまど」を使って、ご飯は羽釜(はがま)で炊き、汁ものは鍋
で作っていました。
当然、羽釜や鍋の裏底には「黒いすす」が付きます。その鍋底のよう
に黒い羽をしている様子から、鍋鶴という名前が付きました。
ナベヅルの次に飛来数の多いのが、マナヅルです。
漢字表記は「真鶴」・「真名鶴」・「真菜鶴」などがあります。
どうして「真」という漢字が使われているのでしょうか。
ツルを食べていた頃の話で、一番おいしかったのがマナヅルだったという説がある一方で、一番
まずかったという説もあります。
江戸時代、ツルは全国的に飛来していたようで、「鶴」という名の付いた地名は全国にありま
す。
当時は、将軍家はじめ各地の領主の間では鷹狩が流行していました。
その鷹狩の獲物として最高のものは「鶴」や「白鳥」で、将軍家や徳川御三家以外の者が捕獲
することは、禁じられていました。
捕獲されるツルの中ではナベヅルが一番多く、次がマナヅルだったようです。
昔から、ナベヅルの飛来数が多かったのでしょう。
将軍が放ったタカが最初に捕獲した鶴や白鳥の肉は塩漬けにされ、朝廷に献上されたそうです。