今年の啓蟄(けいちつ)は3月5日でした。
啓蟄とは冬ごもりしていた虫たちが土の中から出てくる時期で、日差しも少しずつ暖かく
なり、自然が動き始める季節です。
また3月は虫だけでなく、クマが冬眠から目覚める時期(下写真)にもなります。
クマの冬眠はリスなどの小型哺乳類と違って、足音だけでも目が覚めるような浅い眠り
のため、「冬ごもり」という言い方をすることもあります(下図)
クマでは体温もあまり下がらず、31℃~35℃程度です。
リスなどでは、冬眠中も時々起きてエサを食べ排泄もしますが、クマは3~4か月の間、
飲まず食わずで排泄もしないとされています。
ただ上野動物園での冬眠実験(下写真)では、水飲み場に水を飲みに行った例がある
ことから、野外と飼育下では多少の違い(気温の関係?)がありそうです。
なお、冬眠明けが近くなるとクマは「とめ糞」という粘土のような糞をします。
排尿しないと尿毒症が心配ですが、アメリカクロクマでは冬眠期の血中尿素は腸管内に
拡散し、腸内細菌によってアンモニアや二酸化炭素に分解され、アンモニアは血中に
戻りタンパク質の合成に再利用されるという、特異的な機能を持っていると考えられる
とか。
動かない生活でエネルギーも使いませんから、食べる必要もありません。
クマは、エサのない冬にぴったりの冬眠という能力を身に付けたのです。
クマのメス(脂肪を十分蓄えた栄養状態の良いメス)は冬眠中に出産(下写真)するの
で、冬眠明けが遅くなる傾向にあります。
一方、十分なエサが採れず脂肪を蓄えることができなかったメス※では、受精卵は着床
することはありません。
※ヒグマでは、体脂肪20%未満のメスでは受精卵は着床しないと言われています。
クマの乳はタンパク質は牛の約3倍、脂肪は約4倍にもなり、未熟な状態で生まれる
クマの赤ちゃんにとっては、最高のプレゼントになります(下写真:ツキノワグマ)
ヒグマの赤ちゃんの体重は約400g、ツキノワグマでは約300gしかありません。