毎年、世界中では十数万人が毒ヘビに咬まれて亡くなっており、命が助かっても体の一部
欠損などの後遺症で苦しむ人たちも数十万人いるとされています。
毒ヘビに咬まれた際の対処法ですが、①ヘビから離れる ②可能な限りヘビの特徴を
覚える(できれば写真を撮る) ③身に着けたアクセサリーや時計を外す(足を咬まれた
場合は靴を脱ぐ→足が腫れて脱げなくなる) ④咬まれた場所を水などで洗浄し清潔に
保つなどがありますが、出来るだけ早く医療機関で専門的な治療を受けることが大切
です。
毒ヘビ咬症で使われる血清は、正確には「抗毒素血清」と呼ばれ、その主成分は特定の
成分に対して中和作用がある抗体を指すγ-グロブリンです。
その精製は、主に馬を用いて行われます(下写真)
一方で毒ヘビに咬まれても、毒液は自動的には注入されないことが分かっています。
千石先生(2012年逝去)をかごしま水族館にご案内した時、エラブウミヘビ(下写真)
の展示の前で教わりました。
このような咬み方をドライバイト(Dry Bite)と言い、消化液の役目もある毒を節約する
ためと考えられています。
なお、人が毒ヘビに咬まれた場合(毒が注入されたことを前提に)は、手遅れにならない
ように治療を始めることが重要です。
さてヘビ毒ですが、医療用への応用について研究が進んでいます。
キングコブラやガラガラヘビ(下右写真)、マムシの毒は、血栓の分解やガン細胞の増殖
抑制など、幅広い病気に効く可能性があります。
また、ブラックマンバ(下写真)の毒には鎮痛作用があり、多くの鎮痛剤のような呼吸
抑制がないことが分かっています。
他にも、ヘビ毒を使ってお肌のシワを和らげたりハリを与えるなど、アンチエイジング用の
化粧品(下写真)もあるようです。
ところで皆さんは、WHOのロゴマーク(下写真)をご存知でしょうか?
このロゴマークのヘビは一体、何なのでしょうか。
いろんな説もあるようですが、杖と巻き付いたヘビは医学と医療職の象徴であり、杖を
持っていたのはギリシャ神話に登場するアスクレピオスで、治療の神として古代ギリシャ
人に崇拝されていました。
古代ギリシャでは、ヘビから採られたものには薬になるものと毒になるものの二面性が
あると考えられていました。
医学にも「生と死」・「病気と健康」という正反対の矛盾したものを扱う二面性があり、
ヘビがこれを表現するシンボルとなったというものです。