一般に多くの野生動物は寒い冬から暑い夏に、また暑い夏から寒い冬に対応する
ため毎年、一定期間に体毛が生え替わります(下写真:ムフロン)
この生理現象は人間でいう衣替えのようなもので、動物では「換毛(かんもう)」
と言います。
多くの動物は年2回換毛(イヌ科の動物は年1回)し、春には下毛が抜けて涼しい
夏毛になり、また秋には寒さ対策として下毛が密集した冬毛になります。
野生動物の換毛には、日長の変化も重要な要素です。
春は、長日化によって松果体分泌ホルモンであるメラトニン濃度が低下し、秋は
逆に、短日化によってメラトニン濃度が上昇することで換毛が始まります。
ところで今の時期、ヒツジを飼う施設では毛刈り(下写真)が行われ、ニュース
にもなりますが、皆さんはヒツジがなぜ野生動物のように自分で換毛できないか、
疑問に思ったことはありませんか?
ムフロン(下写真)は、イタリア西部のコルシカ島などを原産とする野生ヒツジで、
紀元前6,000年頃に改良が始まり、現在のヒツジの祖先の一つと考えられています。
先人たちは、柔らかく縮れた毛が多く得られるようにムフロンの選抜淘汰を行い、
改良を続けてきました。
野生の頃のヒツジには毛刈りは必要ありませんでしたが、柔らかく紡ぎやすい下毛
(ウール)がたくさん採れるように改良された結果、現在のヒツジは自力では換毛
することができなくなったのです。
毛を刈らないと、ヒツジはどうなるのでしょうか?
伸び続けた毛によって熱がこもると体温調節が出来なくなり、熱中症で死亡する
こともあります。
また、皮膚病を起こすこともあります。
鳥たちにも、換羽という生理現象があります。
一般に少なくとも年1回、古くなった羽が抜け落ちて、新しい羽に生え替わります。
換羽は鳥の種類や年齢、性別などによって生え替わり方が決まるようです。