環境省は11月1日、10月のクマによる全国の人的被害件数が59件、被害者が71名と
なり、同時期の記録が確認できる2006年以降、最多だったと発表しました。
以前の被害は山菜取りやキノコ狩りなど、人間がクマの生息域に入ることで発生
していましたが、今年は逆にクマが人間の生活圏に入って来て、様々なトラブル
を起こしています。
エサのドングリ類が不作になると、特に弱いクマや若いクマは、エサを求めて
人里や市街地まで降りてくるようになりました。
家の近くにある栗の木や柿の木など、クマを呼び寄せる樹木の管理も必要になって
きます。
北海道では今年7月30日、乳牛に多くの被害を与えたOSO18というヒグマが、地元
のハンターによって射殺されていたことが分かりました。
OSO18は4年間の間に牛66頭を襲い(内32頭が死亡)、初めて被害が出た北海道
標茶町のオソツベツと幅18cmの足跡から、その名前が付きました。
死亡時の体長2.1m、体重約330kgで特別大きくはなく、顔に傷があったとのこと。
さらにOSO18と確認される前に解体・処理・販売されており、肉を購入した東京
のジビエ料理店では、炭火焼きにしたモモ肉が好評で、完売したそうです。
クマの仲間は、肉食の傾向が強いホッキョクグマを除いて一般的には雑食性で、
栄養源の70%ほどは植物質と言われています。
ヒグマも同様ですが、特にOSO18は肉食に対する強いこだわりがあったようです。
かつて北海道には、エゾオオカミ(下写真)が生息していましたが、狂犬病など
の感染症や家畜(馬)を襲う害獣として駆除された結果、明治の中頃には絶滅
したと考えられています。
一時は絶滅の可能性もあったエゾシカですが、天敵のエゾオオカミがいなくなり、
温暖化による冬場の餓死も少なくなって、今度はエゾシカが農作物を荒らす害獣
として駆除の対象になりました。
現在、年間10万頭以上が駆除されているようですが、生息数は70万頭くらいでほぼ
一定しています。
駆除されたエゾシカは、一部がジビエ料理やペットフードなどの原料になるものの、
そのまま放置されることも多く、ヒグマにとっては格好の獲物になります。
専門家からは、人の行動がクマの行動を変えた可能性も指摘されていますから、
第2、第3のOSO18を生まないためにも、駆除したエゾシカの適切な管理が必要に
なります。
温暖化で雪も少なくなり、冬場にエゾシカなどのエサがあると、冬眠しないクマ
による冬場のトラブルも増える恐れがあります。
その一方で、クマを駆除した自治体には苦情の電話やメールがあると聞きます。
駆除したハンターも、決して好き好んでクマを撃っているわけではありません。
ハンターの想いにも、耳を傾けるべきだと思うのですが、、、。