オオコウモリの仲間は、一部の種を除いて超音波は出しません。
その代わりに目が大きく、夕方から夜にかけて活動し、果実・花蜜などの植物質を食べます。
食べると言っても果肉などを飲み込むのではなく、果汁だけを飲み込むため、搾り取られた
もの(食べカス)は吐き出され、食痕として残ります。
バナナは果汁が少ないため飲み込みますが、すぐに便と一緒に排泄されます。
体を軽くする必要から、鳥類と同じように消化スピードを早くしたのだと思います。
鹿児島国際大学の船越教授らの調査では、口永良部島ではイヌビワ・アコウ・ガジュマル・
ハマヒサカキ・ホルトノキなどの果実のほか、マルバグミの葉なども食べていることが、
分かっています。
中でもマルバグミの葉は常食され、重要なタンパク資源になっているようです。
興味深いのは、食痕の中にコガネムシなど、甲虫の破片が混ざっているということです。
偶然か意図的なものかは分かりませんが、意外と昆虫なども食べているのかも知れません。
以前、私が飼育を担当していた時は、果物のほかに動物用の粉ミルクやドッグフード
なども、少し混ぜて与えていました。
オオコウモリ類の分布は、アジアやアフリカ、オーストラリアなどの熱帯・亜熱帯など、
一年中果実が実っている地域に限られているので、小型のコウモリ類のように冬眠する
ことはありません。
またオオコウモリは、指にも特徴があります。
小型のコウモリ類は第1指(親指)にしか爪がありませんが、オオコウモリでは一部の種を
除いて、第2指(人差し指)にも爪があります。
船越教授らによれば、新岳噴火以降の個体数に大きな変化はないそうですから、取りあえず
ひと安心ですが、噴火による森林の消失も一部に見られることから、エラブオオコウモリの
好適な生息域は狭められているようです。
また隣にある屋久島では、タンカンなどの木に飛来するエラブオオコウモリも観察されて
エサを求めた一時的な飛来か、定着しているかは不明です。
自然環境としては口永部島より良さそうですが、エラブオオコウモリの定着には、エサの
競合するヤクザル、ヤクシカの存在が関係しているのかも知れません。