動物を「飼育する」ということ そのⅦ

横浜市の野毛山動物園に、「ツガル」という世界最高齢のフタコブラクダ(雌)がいました。bactrian-camel-731989_640

多くのマスコミにも取り上げられ、大変な人気者でしたが、晩年は

前足の関節炎から立ち上がることができず、不自由な生活を送って

いたようです。

正直、テレビでその姿を見た時は驚きました。

ひと昔前の日本では考えられないような光景だったので。

 

動物園で飼われているのは、元気な動物だけではありません。

病気治療中や人工保育(育雛)、障害のある動物、高齢、保護動物など、実に様々です。

特に障害を持った動物の展示は、同じような障害を持たれた来園者への「配慮」という

考え方から、長年、タブーとされていました。

以前、アメリカに首の曲がったキリンを展示している動物園がありましたが、来園者は配慮に

欠ける展示だと思っていたのでしょうか%e9%a6%96%e3%81%ae%e6%9b%b2%e3%81%8c%e3%81%a3%e3%81%9f%ef%bc%9a20080522064047

それとも、障害があっても一生懸命生きている姿に、普遍的な

価値」を共有していたのでしょうか。

いずれにしても、何をするにも止めるにも、賛否両論があります。

 

保護動物では、ツバメやフクロウなど鳥のヒナも、よく動物園に持ち込まれます。

swallows-176140_640樹上に巣を作る鳥の場合、ヒナ鳥の「巣立ち」は飛べるようになる

です。

」は鳥にとって子育ての場所でもありますが、外敵の標的

にもなるので、できるだけ早く巣を離れるの必要があるのです。



この時期のヒナ鳥はまだ十分に飛べず、親からはぐれたと勘違いされ、保護されることもあり

ます。

ツバメでは巣が落下し、親鳥がエサを運んでこなくなると保護されます。

親鳥にとっては、リスクを抱えてエサを運ぶより、次の繁殖を目指した方が得策ですから。

飛んでいる虫※が主食のツバメですが、人間が育てるとなると、虫の確保が大変です。

手っ取り早いのは、ふやかしたドッグフードを与えることです。

ドッグフードなら栄養のバランスも良く、簡単です。 市販のミルワームは栄養バランスが悪く、

与えすぎると消化不良を起こします。

 ※飛んでいる虫:ハチ、ハエ、トンボ、アブなど

 

フクロウには、主にマウスを与えます。

tawny-owl-175969_640目の前のエサを食べられるようになると、広い場所に移して給餌も

夕方にします。

部屋には止まり木のほか、マウスの隠れ家とマウスのエサ・水など

も用意し、有色の生きたマウスを放しておきます。

(自然界の野ネズミは、ほぼ有色なので)

朝の掃除でペリット※が確認できれば、マウスを食べている証拠ですから、やがて放鳥

なります。

 ※ペリット
  猛禽類などが吐き出す、羽や骨などの未消化物の塊

野生復帰させるうえでの一番の問題は、動物たちが人間に慣れ過ぎてしまうことです。

自然界での人間は怖い存在ですから、むやみに人間に近付いてはいけないのです。

ところが、人間からエサを貰って育てられると、人間は、お腹を空かした時にエサをくれる

優しい存在と、勘違いしてしまいます。

旭山動物園で育てられたトビの例ですが、野生復帰後、エサを探せず(お腹を空かし)、

バケツを持った農家の人の手に、飛びかかって来たことがあったそうです。

きっと、バケツの中に「エサが入っている」と、勘違いしたのでしょう。

多くの鳥では、彼らを育て上げることはできても、野生での「生きる術」までは教えられ

ません。

食べ物・飲み水の探し方、雨宿りや身を守る方法、健康管理に必要な羽づくろい・水浴び・

砂浴びなど、大切なことは全て、彼らの本能に任せるしかありません。

私も多くの鳥たちを野生復帰させてきましたが、これで良かったのか、これから生きて

いけるのか、いつも自問自答しながら、その後ろ姿を見送ってきました。

一方、(私自身の力不足ですが)モズ・ヤマガラ・アカショウビン・ハヤブサ・クマタカ

などの保護動物の他、園内で生まれたルリカケス・アフリカハゲコウなど、育て上げられ

なかった鳥たちも、たくさんいました(合掌)

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