動物を「飼育する」ということ そのⅢ

動物園・水族館は単なる娯楽施設ではなく、大きな社会的使命を持っています。

その一つが種の保存です。

種の保存とは、世界中の動物園や水族館がオーナーシップ(所有権)を超えて協力し、絶滅の

危機に瀕している野生動物種の飼育下における計画的な繁殖を行い、個体数の維持を図るもの

です。

 

動物種によっては、繁殖個体の自然復帰も各地で行われています。

レオポン

ここでいう「種」とは純粋種であり、ある目的を持って意図的に

作り出された、レオポンのような雑種ではありません。

(レオポンの父親はヒョウ、母親はライオン)

 

家畜では、より人の役に立たせる目的で雑種が作られてきました。

 

たとえば「ラバ」の父親はロバ、母親はであり、人間が期待した通りの経済性・頑健・利口

という三拍子揃った動物として、今でもアジアや中米では重要な家畜です。

ラバ

ラバ

ちなみに、父親が馬で母親がロバの場合は「ケッティ」と呼ばれ、

役務には向きません。

ところで、ロバと馬は種が違うため、大人を同居させても容易には

繁殖しません。

 

 

そこで、ロバの繁殖オスを作る時は、生まれた子どものロバを馬の群れの中で育て、自分を

馬だと思い込ませるのです。

 

人間が作り出す意図的な雑種とは別に、自然界でも雑種は生まれています。

たとえば、出水平野に飛来するナベヅルとクロヅルの雑種はナベクロヅルと呼ばれ、たまに

出水にも飛来します。

 

むしろ自然界における雑種で問題なのは、地球温暖化という、我々人間の経済活動がもたら

す悲劇です。

ホッキョクグマは、極地という地理的要因で生息地が守られてきましたが、(近年の温暖化

も影響していると思われる)ヒグマの北上による両種間の雑種グマ(ハイブリッド熊)が、

10年ほど前、カナダで確認されています。

        雑種クマ

雑種クマ

もともとヒグマとホッキョクグマは遺伝的にも近く、今ほど種の

保存が叫ばれていない時代、両種の雑種が動物園でも生まれていた

事実もあります。

 

 

 

一方、そのハイブリッド種を意図的に作り出して売買している輩や、それをホッキョクグマ

と称して展示しているニセモノ大国もあるらしく、困ったものです。

 

かつての見世物小屋のような、興味本位の非科学的な飼育・展示から学ぶものがあるとすれ

ば、人間の愚かさしかありません

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