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動物には、その動物独特の病気があり、「カンガルー病」もまた、特異な病気です。
原因は、口腔内での細菌感染で、その発症メカニズムの詳細は、完全には解明されていません。
この病気を発症すると、まずよだれを垂らす事が多くなり、捕まえてアゴを触ると、腫れている
ことも多いです。
口の中を見ると、歯周病のため歯がぐらぐらしていたり、歯茎から出血している個体もおり、
症状が進むと次第にエサを食べられなくなり、最終的には衰弱死します。
解剖してみると、肺や肝臓に膿痬がみられることもあります。
ある夏の日、大人のカンガルーが発症しました。
初めは、口腔内の消毒や抗生剤の注射で持ちこたえていましたたが、秋の気配とともに痩せ
その日は、さらに衰弱が進んでいたため動物病院に収容しました
が、カンガルーに残された時間はあまりありませんでした。
そんな時、最後まで延命治療を続けることだけが、獣医師の務め
だとは思いません。
「カバ園長」で有名だった西山登志雄氏も、上野動物園時代にラクダの治療を断ったことが
あります。
「ラクダは砂漠で、星を見ながら死ぬ動物だから」というのが理由です。
その夜、西山さんはラクダといっしょに、夜を過ごしたそうです。
人に尊厳死があるのなら、動物にも尊厳死があっていいと思います。
大切なのは、どのようにして最期を共有するかではないでしょうか。
「死を待つ人の家」を建て、尊厳ある最期を叶えてあげたマザーテレサのことも、こころの
片隅にあったのかも知れません。
カンガルーにとっての尊厳ある最期とは何なのか。 痩せた体をかかえ、温めたミルクを死に水
のつもりで飲ませました。
すると、どうでしょう。
脱水のために、大きくくぼんだ左右の目がしらから、信じられないほど透明で大粒のなみだが、
こぼれ落ちたのです。
静かに横たわる体は、母に甘えて遊んだころを夢みるように、穏やかな眠りにつこうとして