5月2日、南大西洋上を航行中の探検クルーズ船(下写真)から、ハンタウイルス感染症の発生
疑いのあることが、WHOに報告されました。
ユーラシア大陸に広く分布するアジア・ヨーロッパ型(腎症候性出血熱)は、韓国と歴史的
に繋がりがありますが、今回の集団感染とは別系統のウイルスになります。
1950年代の朝鮮戦争時、韓国に駐留していた国連軍兵士(約3,000人)に、原因不明の出血熱
が多発しました。
その後、漢灘江(ハンタンガン:下写真)流域のアカネズミからウイルスが分離され、当初は
ハンタンウイルスと命名されましたが、後にハンタウイルスに統一されました。
現在でも中国では数万人/年間、ロシアでは数千人/年間、韓国では数百人/年間の感染者が
出ているとのこと。
治療としては、C型肝炎などの治療に使われる抗ウイルス薬のリバビリン(現在は製造中止)
のほか、韓国ではワクチンも使われているようです。
なお日本では、1985年以降ハンタウイルス感染症の発生はありませんが、北海道に生息する
エゾヤチネズミ(下写真)は、ハンタウイルスを保有していると言われていますから、注意
が必要です。
ハンタウイルスにはアジア・ヨーロッパ型の他、南北アメリカ大陸に分布する北米・南米型
(ハンタウイルス肺症候群)もあり、今回の集団感染の原因とされています。
特に警戒しなければならないのが、南米のアルゼンチンやチリなどのパタゴニア地方の固有
種であるアンデス株(アンデスウイルス)です。
アンデスウイルスは強い咳と急激な呼吸不全が特徴で、致死率も高い(40~50%)ことが知
られており、また人・人感染も確認されています。
屋外の作業小屋や倉庫、古い建物の掃除などで、ウイルスを保有しているネズミの尿や糞、
唾液で汚染されたホコリを吸い込んだり、ネズミの体液が付着したものに触れ、その手で
口や目などを触ることで感染します。
現在ワクチンはありませんが、次世代DNAワクチンの開発が進められているようです。
なお、日本政府はイギリス政府の要請に応えて、新型インフルエンザに効果があるとされ、
国内で備蓄していたアビガン(下写真)をイギリス政府に提供しました。
またスイスの研究機関の発表によれば、ハンタウイルスに感染した男性(6年後)の血液や尿、
呼吸器からはウイルスの痕跡は消失していましたが、精液からはウイルスのRNAが検出されま
した。
精巣は精子を守るため、体の免疫システムによる攻撃が起こりにくいと考えられており、研究
者たちは、精巣がウイルスの隠れ家になっている可能性を指摘しています。





