2月8日~19日にかけて、タイ北部のチェンマイ県にあるタイガーキングダム(下写真)で
飼われているトラ72頭が、相次いで死亡するという事例がありました。
施設ではトラやチーターと直接触れ合ることができるため、来園者にとっては最大の魅力
になっています。(下写真:チケット)
施設では、インドシナトラ(下写真)の保護・増殖を目的に数百頭のトラを飼育しており、
過密状態であったことが指摘されています。
さらに、近親交配によるトラの免疫機能の低下なども指摘されています。
トラは施設内のメーリム地区で21頭、メーテーン地区では51頭が死亡しています。
メーテーン地区の施設では、8日頃から数十頭のトラに傾眠・食欲不振・発熱などの症状
が見られ、過密状態で飼育されていたことから急速に拡散したようです。
施設では鶏の生肉を与えていたため、当初は鶏インフルエンザウイルスの感染が疑われま
したが、ウイルスは検出されませんでした。
解剖の結果、トラの肺からマイコプラズマ菌の痕跡と犬ジステンパーウイルスが検出され
たとのこと。
犬ジステンパーは尿や血液、唾液との接触のほか、空気中のウイルスとの接触でも感染し、
呼吸器系や消化器系、神経系に深刻な損傷を与えます。
ジステンパーは、主に犬やイヌ科動物の感染症とされていますが、過去には唯一の淡水性
アザラシであるバイカルアザラシ(下写真)が犬ジステンパーウイルスに感染し、大量死
した事例もあります。
他にも、アフリカのセレンゲティ国立公園(下写真)のライオンやインドライオン、インド
やネパールのベンガルトラやヒョウが死亡した事例などもありますので、注意が必要です。
動物園の人気者でもあるレッサーパンダ(下写真)ですが、実は犬ジステンパーウイルス
に対する感受性が非常に高いことが知られています。
ですから、自宅で犬を飼っている人(犬にワクチン接種するため)は、レッサーパンダの
飼育担当にはなれません。
ジステンパーはレッサーパンダ以外でも、イタチの仲間やアライグマ、スカンクなどにも
感染し、ネコや大型ネコ科動物(トラやライオン、ヒョウなど)では、より強い症状を引
き起こすと言われています。
野生動物への感染はイヌから直接ではなく、他の野生動物が媒介しているようですから、
絶滅危惧種を守るためにも、野生動物用の安全なワクチン開発(注射以外)が急務です。
ただ、その安全性をどうやって確かめるのか、多くのハードルがありそうです。
なお、犬ジステンパーウイルスは(人間には感染しませんが)多くの肉食動物にも感染し、
その名前と宿主域が適当ではないため、改名を主張する研究者もいます。






