と体給餌

皆さんは「と体給餌(とたいきゅうじ)」をご存じでしょうか?

と体給餌とは、と殺した野生動物由来の毛皮や骨が付いたものをエサとして飼育動物に与える

(下写真)ことをいいます。

 

 

 

 

 

と体給餌は肉食動物たちはにとって本来のエサに近いものになるため、食べる時間も長くなり、

行動も多様化(舐める・引きずる・前足で抑える・皮も食べるなど)します。

普段は5分程度で食べ終わるのが、30分以上かかることもあるそうですから、環境エンリッチ

メントを考えると、有効な給餌法になります。

環境エンリッチメントとは、動物福祉の立場から飼育動物の幸福な暮らしを実現するための、

具体的な方法のことです。

もちろん餌やりだけがすべてではありませんが、野生の行動に近づけることで動物たちのQOL

が良くなればいいのですから。

 

欧米では以前から行われていましたが、日本でも2017年から初めて大牟田市動物園(下写真)

実施されました。

 

 

 

 

 

23年度現在、25の園館(下図)で大型ネコ科動物、イヌ科、ハイエナ科、クマ科、コンドル科

などの動物のエサとして、使われています。

 

 

 

 

 

日本ではシカやイノシシによる農業被害が急速に増加し、人々の生活や生態系に大きな影響を

及ぼしてきました。

そこで、積極的な捕獲(130万頭/年間)による生息数の管理を行ってきましたが、ジビエと

して利用されるのは約10%に過ぎず、大部分は埋却焼却処分されています。

と体給餌は駆除個体の利活用にも資するものになりますが、使用する野生動物によっては、

感染症のリスク(豚熱・口蹄疫・鳥インフルエンザなど)もあります。

たとえば、死亡した野生イノシシからは豚熱(豚コレラ)ウイルスの検出される例が九州から

東北地方まで、全国的に見られます(下写真)

 

 

 

 

 

ですから、豚熱ウイルスが見つかった地域の駆除イノシシは、と体給餌としては利用されること

はありません。

と体は中心温度が63℃30分以上低温加熱処理がなされ、感染リスクのある頭部内臓血液

などは除外されます。

またSFTS(重症熱性血小板減少症)予防対策として、5日間以上凍結しダニも除去しています。

このように、処理コストがかかること・安定供給体制の確立など、課題も指摘されています。

 

 

 

 

 

 

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