敬老の日は1966年(S41年)に設けられた祝日で、一般的には70歳以上の方を祝うことが多い
ようですから、私も対象者です。
さて、私たち人間には「老後」があります。
たとえば女性の場合、高齢になると共同体の中で周囲を助ける年長者としての役割を果たすこと
で、子孫繁栄に貢献しています。
俗にいう「おばあちゃん仮説」です。
また少数ですが老後のある動物もいるようで、現在研究で分かっているのは、シャチとゴンドウ
クジラ(下写真)です。
シャチのメスは30~40歳で出産を終え、その後50年近く生きて子や孫の世話をしながら、知識
や技能を若い世代に伝えます。
それによって群れの生存率を上げていると考えられており、ゴンドウクジラも同じです。
このように、老後期間を何十年と生き続ける方が動物界では特殊です。
一般的に、多くの動物では高齢になっても生殖能力は持ち続けます。
生殖能力がなくなる時期は、大事な歯も半分くらいは無くなりますから=死となります。
老後期間が長い群れでは、障害を持った個体や高齢個体への介護の問題も出てきます。
シャチ(下写真)では、生まれつき背骨が曲がったシャチが、群れの仲間からエサをもらう
などの介護を受けて長生きした例も観察されていますから、若齢・高齢に関わらず、仲間を
介護する(ケアする)ことの重要性が、進化の過程で生まれてきたのかも知れません。
一方で、同じように進化してきたであろうイルカや他のクジラ類には、なぜ老後期間がない
のか不思議です。
人では、ジョージアのドマニシ遺跡(下写真)から約180万年前(原人)の歯のない頭骨化石
が発見されました。
人だけは入れ歯のお陰で長生きできるようになりましたが、動物は、歯が半分くらいなくなれ
ばエサを食べられないので、寿命が尽きます。
発見された化石から、当時の原人(下図)たちは歯のなくなった高齢者を介護していたと考え
られています。
単に遺体を処分したいだけなら、埋葬ではなく野外に放置するだけで良かったのですから。
ネアンデルタール人(旧人)の遺跡からも、腕や足に障害を持った高齢者が埋葬されていま
すので、家族や仲間への思いやりがあったことが分かります。





