6月4日から10日までは「歯と口の健康週間」となっています。
人が歯を失う原因の一つに歯周病(下図)がありますが、歯周病は細菌による感染症で、
生活習慣病の一面もあります。
最近の研究では、歯周病の原因となる細菌が出す毒素が歯肉の血管から全身に広がり、
様々な病気を発症させたり悪化させることが分かっていますが、中でも、糖尿病との関係
に注目が集まっています(心血管疾患やアルツハイマー病、関節リウマチなどのリスクも)
糖尿病によって体の抵抗力が弱くなると、歯周病に感染するリスクが高くなります。
歯周病があると菌の毒素や炎症に関わる物質が増え、結果、インスリンの働きを邪魔する
タンパク質(TNF-α)も増えることで、血糖コントロールが上手く出来なくなるのです。
歯周病は人だけの病気ではありません。
なんと3歳以上の小型犬の80%は、歯周病に罹っていると言われています。
その要因として考えられているのが、ドッグフードです(歯にくっ付きやすい)
市販のドッグフードではタンパク質や脂肪が~%以上と表記されるものの、炭水化物の表記
は義務付けられていません(50%ほどではないかと考えられています)
海外の研究によると、三大栄養素の割合を変えた食事を犬に選択させる実験をしたところ、
犬が選択した三大栄養素の割合はタンパク質48%、脂肪41%、炭水化物11%だったとのこと。
ちなみに、犬の祖先であるオオカミの報告ではタンパク質71%、脂肪27%、炭水化物2%との
ことですから、いかにドッグフードに含まれる炭水化物が多いかが分かります。
他にも、おやつ(砂糖入り)の与えすぎや過度のトッピングによるカロリーオーバーなど、
愛犬のために改善すべき点はありそうです。
犬にはもっと肉を与えた方が良さそうですが、生肉は細菌やウイルス、寄生虫の感染など衛生
面に注意が必要になります。
また少し高いですが、穀物類を含まないグレインフリーのドッグフード(下写真)もあります。
ただし犬種によっては、グレインフリーのドッグフード摂取によって拡張型心筋症のリスクが
高まるとの話もあります。
いずれにしても、バランスが大事なのでしょう。
人でも、農業の発達によって穀物などの炭水化物をたくさん採るようになった結果、歯周病
が増加したという考え方もあるようです。
紀元前3,000年頃の古代エジプトでは、身分の高い人ほど歯周病の罹患率が高かったと言われ
ています。
美食(甘いもの・柔らかいもの・脂質の多いもの)による贅沢な食生活によって、歯周病に
なっていたのです。
なお、歯周病が最も古い時代に確認された例としては、アウストラロピテクス(下写真))の
骨と言われており、今から400~200万年前になりますから、何とも長い付き合いです。