福岡市動植物園(下写真)は今年9月、動物交換でミャンマーから来園したアジアゾウ4頭
の内の1頭が、来園1か月あまりで死亡したと発表しました。
死んだゾウは12歳のメス(下写真)で、9月5日に右後肢を引きずるような様子が見られ
たため、6日に定期のゾウヘルペスウイルス検査を実施したところ、結果は陽性でした。
そこで、ゾウ舎内の消毒や6時間おきに抗ウイルス剤の投与をしていましたが、9月10日
午前中に急に意識がなくなって倒れ込み、その後死亡したとのことです。
ミャンマーの獣医師による解剖の結果、ゾウヘルペスウイルスによる感染症を発症した
時に見られる特徴的な出血が心臓や内臓(消化器)、外陰部などに見られたそうですが、
死因の特定には至っていません。
園では内臓やリンパ節などのサンプルを北海道大学などに送って、死因を確かめる方針
です(ネット上には未だ、結果は出ていません)
なお残る3頭は、現在のところ健康に問題はないそうですが、心配です。
ゾウヘルペスウイルス(ゾウ血管内皮ヘルペスウイルス)は、世界中のゾウが感染する
可能性があり、日本でも2018年に初めて確認されています。
報告によると、アフリカゾウよりもアジアゾウ(下写真)の方がはるかに多く、直近の
数十年では、飼育下のアジアゾウの主要な死因となっています。
なお、ゾウヘルペスウイルスは人には感染しないとされています。
ゾウヘルペスウイルスには多くのゾウが潜在的に感染している可能性があり、ウイルスは
生涯に渡りゾウ体内に潜伏し、活性化と潜伏感染を繰り返します。
ヘルペスウイルスですから、人の帯状疱疹(下写真)と同じグループに属しますが、人の
帯状疱疹では死亡することは稀です(後遺症で苦しむことが多い)
ウイルスは活性化した時に増殖し、その時であればウイルス遺伝子を検出することはでき
ますが、潜伏感染の時は血中や粘液からはウイルス遺伝子は検出されません。
ゾウに何らかのストレスがかかり、免疫が抑制されることで発症するようですが、ただ
野生のアジアゾウでも確認されているので、飼育下=ストレスとはならないようです。
臨床症状も食欲不振や下痢、無気力、頭部や上肢の浮腫など一定していません。
ゾウの血液中でヘルペスウイルス量が異常に上昇した時に、致死的な出血を起こすと
考えられています(体内で十分な酸素を運べなくなる)
特に8歳以下の若いゾウでは、発症・死亡のリスクが高いと言われています。
現在、有効な治療法は確立されていませんが、発症初期に積極的な治療を行うことで、
救命率を上げることはできるようです。
免疫力を高めるために、普段からビタミン剤を投与している動物園もあります。
ビタミンAやビタミンC、ビタミンB6などです。
人間同様、動物たちにもいろんな病気があります。