横浜のK百貨店内にある伊勢定のウナギ弁当(下写真)を食べた人から嘔吐や下痢
など健康被害の報告があり、市保健所が患者の便を調べたところ黄色ブドウ球菌
が検出されました。
その後の調査では、調理を担当した従業員の手洗いが不十分であったこと、一部の
従業員は手袋をしていなかったこと(マニュアル違反)も分かりました。
健康被害を訴えた人は161名で、その内の90代の女性が嘔吐のあと救急搬送された
ものの、亡くなったとのこと(窒息?誤嚥性肺炎?)
黄色ブドウ球菌による食中毒は、通常は24時間以内に改善し、特別な治療は不要と
されていますが、時に脱水や血圧低下など重症化することもありますので、やはり
気を付けなければなりません。
黄色ブドウ球菌(下写真)は食中毒菌の一種で、過去には大手乳業メーカーによる
戦後最大の集団食中毒事件もありました。
原因は、下記のとおり熱で分解されず、脱脂粉乳中に残っていた毒素でした。
黄色ブドウ球菌は牛豚などのほか、健康な人の体(鼻腔・咽頭・腸管・傷口など)
にもあり、その保菌率は40%ほどと言われています。
形状はブドウの房のような球菌で、増殖する時に産生する毒素(エンテロトキシン)
が食中毒の原因となります。
困ったことにこの毒素は、通常の熱(下図)では分解されません。
不活化するためには、110℃400分又は121℃100分が必要になるとされています。
また黄色ブドウ球菌は、比較的高い塩分濃度でも増殖できるため、おにぎりや
自家製の漬物なども注意が必要です。
ところで、野生動物の中には腐肉を食べるもの(スカベンジャー)がいます。
ハゲワシ(下写真)は有名です。
彼らは腐肉を食べてもなぜ、食中毒にならないのでしょうか。
ハゲワシの強力な胃酸によって、病原菌の大部分は死滅してしまいます。
その胃酸のpHは、希硫酸に匹敵するとか。
また生き残った菌とは、共存できるような免疫システムを持っているとも言われて
います。
さらに、毒素に接触するたびに免疫が対応して抗体を作れるそうです。
ハゲワシは、そのような能力を身に付けることで、過酷な自然環境を生き延びて
きたのです。