危険な暑さが続く毎日ですが、人だけではなく動物たちも、熱中症には気を付け
なければなりません。
先日は、2022年の菊花賞馬アスクビクターモア(下写真:オス4歳)が、放牧中に
熱中症による多臓器不全で死亡したというニュースが流れました。
アスクビクターモアの父親は、あの有名なディープインパクトです。
他にも、福島県の南相馬市で行われた相馬の馬追(下写真)でも馬2頭が死亡し、
1頭は熱中症疑いとのことでした。
馬は寒さには強いのですが、暑さには弱い動物で、体重に対する体表面積は人の
1/3程度しかありませんから、熱が逃げにくい体なのです。
なおメス馬は、筋肉量・体脂肪・ホルモンなどの関係から、オス馬よりも暑さに
強いと言われています。
馬も人と同じように汗をかきますが、その仕組みが人とは違うため、汗だけで体温
調節をするのは難しいのです。
人では汗の大部分はエクリン腺(下図)から出ますが、たとえば病気などで運動を
していない時でもエクリン腺が体温に反応し、汗をかきます。
一方馬では、アポクリン腺が運動や興奮・緊張などによるアドレナリンの上昇に反応
するため、運動をしていない時は汗をかきづらいのです。
また馬の汗腺は、人の汗腺のように塩分を再吸収することもできません。
馬が熱中症になると体温が上がり、呼吸が荒くなり、落ち着かなくなり、パニックに
なることもあります。
そんな時は水分や塩分の補給の他、馬の体に水をかけることも有効で、体の内部に
ある熱まで下げるように、ゆっくりと時間をかけて水をかけます。
また馬にも夏バテがあり、食欲減退になったり、目の周りが黒くなる(下写真)
ことが知られています。
熱中症とは高体温に伴う細胞の障害で、特に脳・心臓・肝臓・肺の細胞は熱に弱い
ためショック状態となり、多くの臓器が機能しなくなる(多臓器不全)に陥り、死
に至る危険性が高くなります。
脳の温度が上がると体温調整が上手く機能しなくなり、熱で壊れた細胞が血液中に
流れ出します。
その結果、腎臓の毛細血管などが詰まって腎不全を起こし、血液を浄化することも
できなくなり、多くの臓器が機能停止するのです。