梅毒感染の増加が止まりません。
特に20代女性が顕著で、SNSによる出会いの場が増えた結果、不特定多数との性交渉
の機会が増えたことが原因のようです。
特に妊娠している女性が感染した場合、約40%が流産・死産となり、無事に生まれ
ても、重篤な症状を引き起こす「先天性梅毒」となる恐れもありますので、注意が
必要です。
梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌(下写真)によって起こる性感染症で、性的な
接触により粘膜や皮膚から感染します。
心配な方は、血液検査(血清診断)で抗体を調べることをお勧めしますが、感染
から4週間以上経過しないと陽性反応が出ないと言われています。
早期の梅毒であれば、ベンジルペニシリンベンザチンの1回注射で完治が望める
とか。
日本でも梅毒は古くから知られており、加藤清正(下写真)や前田利長(利家の
長男)など、戦国時代の大名たちの中にも梅毒で死亡した人たちがいました。
一方で徳川家康は、梅毒が性感染症であることを知っていたため、遊女に接する
ことを自ら戒めていたという話もあります。
ところで、ウサギにもトレポネーマ菌によって起こる病気があります。
別名ウサギ梅毒とも呼ばれる病気ですが、人の梅毒とは菌の種類が違うことから、
人畜共通感染症ではありません。
感染しているウサギとの交尾や、授乳中に感染している母ウサギから子ウサギへ
感染することもあります。
感染したウサギは目の充血や流涙、口や生殖器まわりの皮膚が赤くなったり、
水ぶくれになります。
治療は人と同様に抗生物質の注射になりますが、ペニシリン系では腸内細菌叢の
バランスが乱れ、偽膜性腸炎になることもあるため、クロラムフェニコール系が
第一次選択薬になります。