義足のラッパチョウ

ラッパチョウは南米のアマゾン川流域などに生息する鳥で、オスの鳴き声がラッパの音のよう

に聞こえることから、その名前が付きました。

 

 

 

 

 

あるところに、ラッパチョウがいました。

そこでは、ダチョウやフラミンゴなどアフリカに生息する鳥たちと同じように、屋外の飼育舎

で飼われていましたが、冬場の寒い日だけは、暖房用に投光器を点けていました。


 

 

 

 

ある時、ラッパチョウに異変が起きました。

左足のが、黒くなり始めたのです(もしかして凍傷?)

急いで床暖房のある動物病院に収容し、夜はセラムヒターも点けました。

当初は痛がる様子も見られませんでしたが、左足の指から「かかと」部分に向かって、黒く

なるばかりです。

ある日のこと、かかと関節」から先(下図右の茶色部分)が取れてしまいました。

明らかに飼育管理上のミスです。


 

 

 

 

QOLを維持するには、義足を着けるしかありません。

早速、知り合いの義肢装具士にお願いして、義足を作ることにしました。

まずは、左足のサイズ測定です。

石膏の入った型枠に左足を入れて、型を取りました。

試作品1号は先が細くなった円錐状のもので、歩く様子を見ていると、さすがに「ぎこちない」

感じです。

そこで、指関節を曲げられるようにした改良型2号も作りました。

 

そのことが義肢装具士会の機関誌に紹介されると、地元紙の記者から取材申し込みがあった

そうです。

当然、取材に応じられるのは私以外には考えられません。

ところが、その取材は(ラッパチョウを飼育していることさえ知らないはずの)園長自ら

対応すると言い出しました。

また義足を着けることになった経緯(原因)についても、責任を問われかねない「飼育管理上

のミス」ではなく、「事故によるもの」にすると言うのです。

それが「園の方針」だと(いいな!分かったな!)

 

私が取材に応じれば、飼育管理上のミスを認めるかも知れません。

そのことが公になれば、最終的には園長の責任にもなり、自身の出世に悪影響を及ぼす恐れも

あります。

ここは何としても、私を排除しなければならないと判断したのでしょう。

 

取材当日、私は勤務でした。

 

 

 

 

 

その日は午後からハナジカの角切があり、作業が終わって事務所に戻ると、カメラをぶら下げ

記者らしき人がいましたが、私に声が掛かることはありませんでした。

 

どこかの国のリーダーを決める総裁選のように、「あの男だけには取材は受けさせない」と。

 

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