今日5月14日は種痘記念日です。
1796年5月14日、イギリスの外科医E.ジェンナーは、当時最も恐ろしい病気の一つであった
天然痘を予防するため、世界で初めて種痘の接種を行いました。
それから180年あまり経った1980年、WHOが天然痘の根絶宣言をしたのを受けて、日本でも
この年を境に、種痘の接種が中止されています。
天然痘:紀元前より恐れられていた伝染病(病原体はポックスウイルス科の天然痘ウイルス)
ジェンナーは以前、乳しぼりの女性から「牛痘に罹った人は天然痘には罹らない」という話を
聞いたことがあったため、牛痘に罹った女性の手にできた水疱の中の膿を8歳の少年に接種し
ました。
10日後、少年は牛痘を発症しましたが直ぐに治り、その後、天然痘を接種しても発症すること
はなかったと言われています。
牛痘:天然痘ウイルスに近縁の牛痘ウイルスによる感染症
牛痘は当時、牛の病気と思われていましたが、現在ではネズミなどの齧歯類が自然宿主である
と考えられており、特にネコ科の動物には重篤な感染症を引き起こします。
牛では軽度の炎症を起こし、丘疹や水疱、膿瘍が、人では手や顔に出血性の潰瘍ができる
ほか、浮腫や紅斑ができるようです。
ジェンナーの功績は種痘だけではありません。
皆さんは、自分の卵を他の個体に託す「托卵」という動物の習性をご存知でしょうか。
鳥類のほか、魚類や昆虫などでも観察されているもので、中でもカッコウやホトトギスなど、
鳥類の托卵が有名です。
カッコウのメスは、仮親(オオヨシキリなど)が留守の間に仮親の巣の中に1個産卵し、同時に
仮親の卵を1個捨てて帳尻を合わせます。
そうしないと、仮親に怪しまれてしまいます。
またカッコウのヒナは仮親のヒナよりも早くふ化し、仮親の卵又は後からふ化した仮親のヒナ
を背中に乗せて巣の外に捨てることで、仮親のエサを独占して育ちます。
自分の子供かどうか分かりそうなものと思われるかも知れませんが、仮親は、ヒナが大きな口
を開けてエサをねだると(オレンジ色の口を見せられると)、本能的にエサを与えてしまい
ます。
そういう行動を見せるのは、自然界には我が子しかいませんから。
この托卵について、イギリスの科学雑誌ネイチャーに初めて発表したのが、ジェンナーなの
です。
しかも、忙しい診療の合間に観察を続けながら。