平成23年度から、毎年2月は全国生活習慣病予防月間となっています。
「生活習慣病」とは、その発症に飲酒や喫煙、食生活、運動などの生活習慣が大きく関係する
病気の総称で、名付け親は105歳で亡くなられた日野原重明先生です。
従来は「成人病」と呼ばれていましたが、若年性糖尿病など、必ずしも成人になってから発症
する病気ではないことから、名称が変わりました。
具体的には糖尿病や脂質異常症、高血圧症、歯周病のほか、癌や心臓病、脳卒中、肝疾患など
もあります。
長生きするためには過度の飲酒はやめて、禁煙もして、バランスの良い食事と適度な運動が
大事なようです。
ところで、動物たちには生活習慣病はないのでしょうか。
食事のバランスから言えば、その対極にあるのがコアラです。
基本、ユーカリしか食べないのですから。
コアラが生きていくためにユーカリは欠かせませんが、ユーカリなら何でも食べるわけでは
ありません。
ユーカリは500~600種類ありますが、コアラが食べるのは40種類くらいと言われており、
それぞれの地域のコアラが食べるユーカリの種類は、さらに少なくなります。
ユーカリの葉に含まれる油分は、アロマオイルや治療薬(喉の炎症、リウマチなど)に使われ
るものもありますが、一方では殺虫剤や駆虫薬の原料になるなど、体にとって有害な成分も
含まれています。
ですから、コアラ以外の動物がユーカリを積極的に食べることはなく、コアラはユーカリを
独占することで、生き延びてきたのです。
また野外における観察では、コアラは有害物質の多いユーカリと少ないユーカリについて、
葉の匂いで識別しているようです。
そんなコアラには、ユーカリの有害物質を無害化するシステムが備わっていて、その大きな
役目を果たすのが、哺乳類最大という2mにもなる盲腸です。
大型草食動物の馬でさえ1mですから、その大きさが分かります。
大人のコアラの盲腸には数多くの有益な微生物がいて、その発酵や有害成分の分解のお陰で
効果的に栄養素を摂取することができます。
ただユーカリの葉は硬くて繊維質も多く、消化・発酵にはコアラ自身のエネルギーも使われる
ため、食事以外はあまり動かず、じっとしています。
一方、母親の袋から出てきた子どものコアラは、まだ有益な微生物を持っていません。
そこで母親は、有益な微生物の入った「パップ」という盲腸で作られた離乳食を子どもに与え
ます。
パップは茶色くドロドロしていますので、子どもの口が汚れていたら、パップを食べたという
ことになります。
パップを食べた子どもは、もう安心して母親と同じユーカリを食べることができます。
これほどの愛情があるでしょうか。
人間社会には自分の子どもを虐待したり、ご飯も食べさせない親もいるようですが、そのよう
な種は自然界では生き残れません。
自分の大切な遺伝子を受け継いだ子どもを命がけで守る動物たちのことを、少しは見習って
ほしいものです。