鳥類を除く脊椎動物は、歯を持っています。(歯または歯に類するものと言った方が正確)
鳥類には、どうして歯がないのでしょうか?
以前、鹿児島大学医学部4年生を対象にした講義で、同様の質問をしたことがあります。
ある学生は「胃が丈夫だから」と答えました。医者を目指す学生らしい回答ですが、鳥類は
特段、胃が丈夫なわけではありません。
また別な学生は「エサを丸呑みするため、歯で噛む必要がなくなったから」と答えました。
確かに丸呑みしますが、それで歯が必要ないなら、カエルやヘビ・ワニ、アシカなどには、
どうして歯があるのでしょうか?
鳥類に歯がない理由、それは空を飛ぶためです。
恐竜が進化して空を飛べるようになるには、できるだけ体を軽くする必要がありました。
歯をなくすことで、丈夫なアゴや歯を動かす筋肉もいらなくなり、好きな時に「おしっこ」
することで、膀胱もいらなくなりました。
尿は、尿素でもアンモニアでもない半固形の尿酸として排泄します(例外あり)
尿素だと水に溶け、卵の中のヒナは中毒(尿毒症)を起こしてしまいます。
そこで、水に溶けない形にしました。
メスでは卵巣・卵管も左側だけ残し(例外あり)、1回の産卵では1個産むようにしました。
オスの精巣は1対ありますが、ほとんどの種では外部生殖器をなくしました。
外部生殖器を持つものは、ダチョウやエミュー、水上で交尾するカモの仲間などです。
他にも、声帯や横隔膜、リンパ節なども鳥類にはありません。
哺乳類の場合、基本的な性染色体はオス:XY・メス:XXですが、鳥類ではオス:ZZ・
メス:ZWです。
哺乳類ではY染色体が、鳥類ではZ染色体が性の決定に関わっているようです(例外あり)
受精卵の性は受精時に決まりますが、発生時の環境温度※によって性が決まる種もいます。
(ツカツクリの仲間)
※温度依存性性決定
多くの爬虫類で見られる、孵卵期間中の環境温度によって性が決まるシステム
骨も空洞(含気骨:がんきこつ)にすることで軽量化を図る一方、骨折のリスク回避のため、
内部をトラス構造※にすることで強化しました。
※トラス構造:三角形を単位とした骨組構造で、橋や陸橋などの補強にも使われる工法
鳥類は消化効率を高めるため、腺胃と筋胃という二つの胃を持っています。
特に植物の種子など、堅いものを食べる種類では、筋胃の中にグリッドと呼ばれる砂粒が
あり、消化を助けています。
鳥以外でも、絶滅した恐竜やワニ・アシカ・アザラシなど、エサを丸呑みする動物の胃から
石が見つかっています。
また鳥類は、危険を感じた時に素早く飛び立てるよう、体温が高く(40~42℃)なっています。
車で言えば、アイドリング状態になっているのです。
ダチョウ※やエミュー・ペンギンなど、飛ばない鳥の体温は、飛ぶ鳥よりも低くなっています。
※ダチョウ
日本初の人工ふ化は、宮崎市のフェニックス自然動物園(温度設定を低くしたことで成功)
※人工ふ化
孵卵器などを使って人工的に孵化させること(日本では、ダチョウの自然孵化例はなし)
同じ人工ふ化をする場合でも、爬虫類と鳥類では、大きなな違い
があります。
爬虫類では、一定時間を過ぎた卵を転卵すると、胚が死んでしま
います。
そのため、回収した卵には鉛筆などで印を付けておき、上下を間違わないようにします。
逆に鳥類では、胚が殻の内側にくっついて死なないように、最低でも日に4回は、転卵しなけ
ればなりません。
野生では親鳥が口ばしで卵を転がし、均一に温めます。
卵殻は、孵化日数の短い鳥※では薄く、逆に長い鳥※では厚くなり、割れるリスクを回避して
います。
※スズメ:11日(平均) ツバメ:14日(平均) ※ダチョウ:42日(平均)
ただ、殻が厚いままだとヒナが出てこれない可能性もあります。
そこでヒナの成長に合わせて、殻のカルシウムは少しずつ消費され、その分、殻は薄くなり
ます。
卵に穴を空けたヒナは、半時計回りに殻を割っていきます。
肉眼では分かりませんが、卵殻には小さな穴が多数空いています。
そのため卵の中のヒナは、その穴を通して呼吸することができます。
ちなみに、ニワトリの卵には約7,000~17,000個の穴があいている
そうです。