動物を「飼育する」ということ そのⅤ

動物園・水族館の本来の目的、それは動物たちを飼育することではなく、彼らの魅力・すばら

しさ、そして長きにわたり多種・多様な生き物たちを育んできた、地球のすばらしさを後世

伝えることです。

生きた動物たちがいなくても、その魅力が伝えられるなら動物園や水族館は必要ありません。

動物飼育は、あくまでも、その手段に過ぎないのです。

 

動物たちの飼育には、その動物でなければならないメッセージあります。

ジャイアントパンダ、オランウータン、チーター、ホッキョクグマ、アジアゾウなど、動物

たちからの様々なメッセージは、来園者の皆さんの心に届いているのでしょうか。

 

たとえばオランウータンの展示では、我々の豊かな食生活の陰で、彼らが追い詰められている

現状を伝え、我々に何ができるかを考える「きっかけ」にしなければなりません。orang-utan-1341290_640

オランウータンの生息地ではジャングルが次々と切り開かれ、

アブラヤシの農園が広がっています。

アブラヤシから採れるパーム油の8割は食用として使われ、

即席めん・マヨネーズ・ケーキ・チョコ・スナック菓子など、

他にも洗剤・インク・化粧品・化学製品などにも使われています。

%e3%82%a2%e3%83%96%e3%83%a9%e3%83%a4%e3%82%b7%ef%bc%9ap1060976また、悪いことではありませんが、バイオ燃料の原料としても。

 

 

 

 

チーターなら、絶滅の淵から何とか生き延びて来たものの、種としての多様性を犠牲にする

しかなかった過酷な運命と、一度生息数が激減した動物の、種の保存の難しさを考える

「きっかけ」にしなければなりません。

 

 

 

 

 

チーターは一時的に生息数が激減し、残った個体による近親交配の結果、遺伝的多様性は失わ

れ、免疫力は低下しました。

今後の種の保存を考えると、動物園の役割(繁殖)は、ますます重要になっています。

ただ現状は、飼育下での繁殖が難しい動物の一つです。

 

アジアゾウなら、イヌと同じように、人間や機械ではできない高度な作業の価値を共有できる

大切なパートナーであったこと、信じた人間たちに裏切られた悲しい現実、人間と大型動物と

の共存の在り方などを伝えなければなりません。elephant-1049846_640

国内にゾウに関する法律まで整備しているタイでさえ、森林伐採が

禁止になる直前まで、ゾウたちは働かされました。

休む暇させない現場では、疲れたゾウに覚せい剤まで投与して、

働かせたと言います。

薬の副作用から手に負えなくなると、ゾウたちは次々に森の中に置き去りにされました。

 

欧米なら、動物園・水族館は動物たちのことを学ぶ「教育施設」として認知されていますが、

日本では未だに動物のいる公園又はレクリエーション施設としての意味合いが大きく、遊び

に行くという感覚はあっても、学び行くという感覚はほとんどないように思えます。

 

身近な動物たちを「大切な存在」として受け入れてきた民族と、身近な動物たち

農作物を荒らす害獣」と見てきた民族との違いなのでしょうか。

身近な動物:ネズミ、ウサギ、シカ、サル、クマ、イノシシ、タヌキ、アナグマなど

 

貴重な動物たちを目の当たりにしても、両者(見せる側と見る側)の間に溝があり、

まだまだ、その価値を共有しているとは言い難い現状だと思います。

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